私の名は「パンテーラ」。

 

正式には、トランプ・グローブ・パンテーラ13世だが、

長ったらしい名前なので、単にパンテーラで構わない。

 

私は、高級貴族・パンテーラ一族の末裔だ。

 

パンテーラ一族は、500年の歴史ある由緒正しき一族なのだが、

1つだけ先祖代々続く変な掟がある。

 

それは、手袋をするという事だ。

 

私の遥か祖先であるパンテーラ1世は、

他の一族と素手で握手する事を非常に嫌っていた。

 

理由は、病原菌に感染する事を恐れていた為だ。

 

そう、パンテーラ一族は、遺伝的に手のひらの皮膚が弱いのだ。

 

その為、一族の血を絶やさぬよう手袋をする事で子孫を残してきたのだ。

 

私も一族の掟に従い、生まれた時から手袋をしている。

 

長さは、ショート丈で丁度良く、裾にはオシャレなギザギザ模様、

色は清潔感のある白で、すごく気に入っている。

 

手袋は、完全に私の体の一部になっていると言っても過言ではない。

 

しかし、そんな私にも過去に

一族の血を途切れさせるかもしれない大きな過ちを犯した事があった。

 

私が幼少の頃、別の一族の異性と遊んでいた時の事だった。

 

その日の気温は高く、暑かった為、私は一時的に手袋を脱いでいた。

 

そして、川の上に架けられた丸太の橋を渡っていた時の事だった。

 

私は足を滑らせ、橋から転落しそうになったのだが、

相手が私の手をつかみ、助けてくれた。

 

生まれて初めて素手で他人と手をつないだ瞬間だった。

 

しかし、まさか、その相手が病原菌のキャリアーだったとは・・・。

 

その日以降、次々にパンテーラ一族の者が病気に罹る事態となり、

一族の滅亡は免れたものの、歴史に残る大きな事件となった。

 

掟を破った私は、一族を追放されてもおかしくない身ではあったが、

幸い、命を落とした者はおらず、まだ幼少だった事もあって、

厳しい躾を受けるだけで済んだ。

 

それ以降、私は手袋を手放す事は無くなった。

 

入浴時だけは、唯一、外す事を許されるが、

その時以外は、寝る時でさえ、必ず身に着けるようにしている。

 

手袋・・・。

 

それは、私達一族にとって、無くてはならない必需品なのだ。